合同会社を設立しようと考えたとき、会社設立日にとても縁起がよい日が1週間後に迫っていたので、その日を設立日に決めて1週間で設立の手続きをしました。
主として法務局のサイトを参照しながら、自分でできない定款の電子認証以外は、ほぼ自分自身でやり遂げることができました。
大きく分けて9つのタスクを、ちょうど1週間で進めて行ったプロセスをご紹介します。
ここでは、社員ひとり(代表社員も業務執行社員もわたし自身)、自分で手続きしたので委任状はない場合のプロセスですので、お読みいただく際の参考にしてください。

自分でやる合同会社の設立登記申請の9つのタスク
当記事では、「合同会社の設立手続きを自分でやってみたい」と考える方に、合同設立の体験談をご紹介しています。尚、当記事での体験は2015年7月のものです。関連の箇所について適宜アップデートしていますが、関連法規・法務局の帳票やシステム変更により「この通りにやればよい」ということを保証するものではありません。実際の手続きにあたっては、法務局のサイト等で、最新の情報を確認するようお願いいたします。
【1日目のタスク】
タスク1:合同会社の「設立日」「決算月」「法人名」「法人住所」を決定する
まずは、起業する合同会社の設立日・決算月・社名・住所を決めるころからスタートします。
- 会社設立日:法務局に書類を提出した日(郵送の場合は法務局への書類到着日、オンラインの場合は法務局の業務時間内でシステム処理された日)になります。
こだわりがなければ、気にすることはありませんが、自らのキャリア&ビジネスにとっての「記念日」として、「縁起の良い日」を選ぶという方も多いです。特にこの日を設立日にしたいという場合には、タイミングを逆算して準備を進める必要があります。
以下の記事で、「起業にとって縁起の良い日」を説明していますので、参考にしてください。
細かいことではありますが、1ヵ月のなかのどのタイミングで会社設立するかによって、均等割りや社会保険の金額にも影響がある場合があります。以下の記事でも触れていますので、参考にしてください。
- 決算月:上場企業では3月を決算期(つまり会計年度が4月~3月)としている場合が多いですが、法律的に決算月の縛りはありません。起業にあたっては、決算月が近いタイミングでの会社設立の場合、すぐに決算&税務申告が必要になることに留意しておきましょう。
また、税理士の繁忙期が他社と重ならないように「3月決算を選ばない」というのも一策です。
例えば、小売りであれば「比較的に閑散期である」2月・8月を決算期としている会社も多いです。決算作業は結構な業務負担になるので、小さな起業においても「忙しくない」時期を決算作業の時期として選ぶのは、理に適っているといえますね。
- 法人名(会社名):いくつか候補を決めて、ドメインがとれるか?類似商号の問題はないか?など、確認作業を進めていきます。
海外取引が見込まれる場合には、会社設立後すぐに法人口座を開設する際に会社の英語表記が必要になるので、合わせて考えておくようにしましょう。以下の記事も参考にしてくださいね。
- 法人住所(会社住所):自宅以外の住所を使って登記したい場合には、会社設立の前に住所を手配する必要があります。
外部の固定オフィスは必要ないけれども「自宅以外の住所を使って起業したい」場合、バーチャルオフィス・シェアオフィスが選択肢になります。以下の記事を参考にしてください。
法人の住所を自宅以外にしておけば、日常業務・ウェブサイト・名刺などで使う住所としては、自宅以外の住所を使えます。ただし、登記簿(登記簿謄本・登記事項証明書)には、設立時の役員の住所が記載されますし、合同会社であれば代表社員・株式会社であれば代表取締役は住所変更後の住所も登記されます。「完璧に自宅住所を隠すことは難しい」という点にも留意しておきましょう。
タスク2:法人用の印鑑(代表者印、銀行印、角印)を発注する
法人名を決めたら、法人としての印鑑を作成します。まずは、当初必要になってくる、代表者印、銀行印、角印の3種類の印鑑を準備します。
インターネットにたくさんの印鑑の業者がでていますので、自分の好みにあった業者を選ぶことでよいと思いますが、長く使う印鑑なので、自分の予算内で気に入ったものを選ぶことをお勧めします。
また、法人用の印鑑とは別に、個人の実印もタスク5で使います。「個人の実印を持っていない・あらためて作成したい」という場合は、法人の印鑑と一緒に準備しましょう。
急ぎで法人用の印鑑を購入するときに理解しておきたいことについて、以下の記事にまとめてありますので、参考にしてください。
ここまでで、1日目のタスクは完了です。
【2日目のタスク】
ここからは、いよいよ具体的な書類作成作業に進んでいきます。すべての書類は、A4サイズ。パソコン入力か、黒インクまたは黒ボールペンにて記入をします。
まずは、法務局の商業・法人登記の申請書様式の持分会社の設立の項にある合同会社設立登記申請書の記載例を参照します。これが最終的に法務局へ提出する必要がある書類一式だとざっと内容を確認するようにします。(記載例では、一部が「合同会社」でなくて「株式会社」になっています。作成時に、適宜「合同会社」へ直して作成しますので、心配ありません。)
- オンライン申請やQRコード(二次元バーコード)付き書面申請によるデータ送信、あるいは
- 登記すべき事項を記録したCD-Rを申請書と共に提出
のいずれかの方法を選ぶことになります。
わたしの場合、「会社設立日を確実に決めた日にちにしたかった」「一度の手続きにしてはオンライン手続きも結構面倒そうだった」ことから、(オンラインではなく)法務局へ行ってCD-Rで提出する方法を選びました。
当時と比較して今は法務局のサイトにもオンラインに関する記載が増えていますので、それらを参考にしてオンライン申請という選択もありかと思います。
ただ、すべて自分で書類等を準備する場合には、法務局の相談窓口で「登記申請の書き方や必要な書類等を相談できる」「不備がないか確認してもらえる」という点で、法務局に書類を提出する方法はおすすめです。
CD-Rで提出する場合には、必要なCD-Rが手元にあるか確認し、ない場合には購入して準備しておきましょう。(タスク7で使います。)CD-Rの種類については、会社の設立登記申請でのCD-Rの種類と作成についてを参考にしてください。
タスク3:定款を作成する
定款のドラフトを作成する
定款とは、会社の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規則です。
合同会社設立登記申請書の記載例の6ページ目に、定款の記載例があります。これを例に、赤字で記載されている注意事項に気を付けながら、設立する会社の実情に合わせて定款を作成していきます。
会社定款での事業目的は、インナーネットで検索すればたくさんでてきますが、サンプル例としては会社定款の事業目的検索(サンプル・記載例・ひな型)がコンパクトにまとまっています。こちらは、わたしが電子定款認証でもお世話になった行政書士さんの事務所によるサイトで、わかりやすくまとまっていると思います。
現物出資の手続きについては、以下の記事にまとめましたので、参考にしてください。
【3日目のタスク】
定款ドラフトの内容に問題がないか確認する
作成した定款ドラフト、特に事業目的の内容に問題がないか、管轄の法務局の登記相談を利用して確認します。法務局によって登記相談の利用規定があるので、調べて電話相談、あるいは窓口相談を利用します。
感染症対策に関連して、法務局の業務時間や予約の必要性など、通常時期とは異なるサービス体制になっている場合があります。法務局へ行く場合には、必ず最新の情報を確認するようにしましょう。
タスク4: 電子定款の作成を依頼
定款を紙で作成した場合には、4万円の収入印紙が必要になります。電子定款を作成すれば、この4万円の収入印紙は必要ありません。電子定款を自分で作成することもできますが(後述)、以下のいずれかの方法がおすすめです。(どちらの場合も、収入印紙がいらなくなるので、手数料を支払っても、3万円以上の節約になります。)
- 会社設立サービスを利用する:当記事の冒頭でご紹介したサービス。一連のプロセスに、電子定款の作成が含まれています。(電子定款の事務手数料は、5千円程度。条件を満たしたクラウド会計ソフトの契約で、この手数料は無料になります。)
参考:自分で法人設立ならマネーフォワード&フリーの【会社設立サービス】が便利!
- インターネット経由で司法書士・行政書士へ依頼する:費用の相場としては、だいたい4千円~6千円前後のところが多いようです。高いところでも1万円しない金額です。(実際には、この手続きは司法書士の仕事のようですが、行政書士が窓口になって、提携している司法書士さんに依頼してくれる場合も多いです。)
電子定款は、PDFファイルへ電子署名を入れることで作成できます。以前は高いソフトが必要でしたので外注する一択でしたが、今は下記のものがあれば自分で電子署名を入れることも可能です。
- Adobe Acrobat(対象バージョンの確認はこちら、7日間の無料体験版あり)
- PDF署名プラグイン(法務局より無料で提供)
- マイナンバーカード
- マイナンバーカードの読み取り用カードリーダー(対象のスマホまたはICカードリーダー)
- 申請用総合ソフト(法務局の登記申請用の無料ソフト)
詳しくは、以下のファイルで説明されています。
・法務局のファイル:PDFファイルに電子署名を付与する方法
・Adobeのホームページ:PDFファイルで電子署名を利用する方法
金額的には安価でできますが、一回のみの作業にしてはわかりづらい点が多く、かなり時間がかかってしまいます。そのため、電子定款作成の手数料が5千円程度であれば、以前と同様に外注もありかと感じます。
尚、合同会社の場合には必要ありませんが、株式会社の場合には、さらに公証役場での認証手続き(5万円、予約要)が必要になります。
タスク5:印鑑証明書を準備する
代表社員の個人の印鑑証明書を一部準備します。(これは個人の実印での印鑑証明書です。タスク2で注文した法人用の印鑑とは関係ありません。)
わたしのように、婚姻前の氏をも記録する申出をする場合には、戸籍謄本も準備するようにします。
婚姻前の氏をも記録する申出(旧姓を併記しての会社設立)については、法務局のサイトにある記載例を見て作成しました。詳しくは、以下の記事をご参照ください。
「現物出資がある場合」や「婚姻前の氏をも記録する申出」などを含めて、一般例から離れるケースに関して不安がある場合には、専門家を利用しましょう。
単発で専門家に相談したい場合には、さまざまな士業専門家から選べるココナラ が便利です。サービス料金と実績が事前にわかるので、安心して利用できます。
タスク6:出資金の払込みと払込み証明書を作成する
出資金の払込み
- 必ず定款の作成が終わってから振込みをします。(定款の日にちと同日であれば、実際には前後しても不問。)
- 代表社員の個人の銀行口座を用意します。(新たに準備する必要はなく、これまで使っていたものでよい。通帳の写しを登記申請時に提出するので、通帳がある口座がよい。(代表社員が複数の場合は、そのうちの1人の口座を選ぶ。)
- 用意した銀行口座に、定款に記載した資本金の現金出資の金額を振込みします。(出資者が複数の場合は、振込みが通帳に連続して記載されるようにする。)
- 通帳の表紙、通帳の裏の口座情報のページ、入金が記帳されているページの合計3枚を、すべてA4サイズで印刷します。
払込証明書を作成
- 合同会社設立登記申請書の記載例にある「払込みがあったことを証する書面の例」を参考に、払込証明書を作成します。
- 払込証明書と上記で準備した通帳のコピー3枚を順番にして、ホッチキスで左側長辺を2か所留めて製本します。
- 製本の見開きページ境目に、両ページをまたぐように、全ページに代表者印を押印(契印という)します。
この頃までには、タスク2で注文した法人用の印鑑が届いているはずなので、確認します。
【5日目のタスク】
タスク7:会社設立登記の書類一式を作成する
いよいよ各書類の作成へと進みます。
2日目に見た、法務局の商業・法人登記の申請書様式の持分会社の設立の項に、申請書様式(フォーム)として、PDF、Word、一太郎のファイルがあるので、必要に応じてダウンロードします。記載例を参考に、作成をしていきます。内容は難しいことはありませんが、どうしてもわからない場合には、3日に説明したように法務局の登記相談を利用すれば大丈夫です。
登記申請関連の書類一式
合同会社設立登記申請書
本店所在地及び資本金決定書
就任承諾書
現物出資がある場合の書類一式
現物出資がある場合には、以下の書類も必要となります。
資本金の額の計上に関する証明書
財産引継書
CD-Rの作成
登記すべき事項を記録したCD-Rを作成します。詳細のプロセスは、以下の記事に記しています。
印鑑届書
法務局のサイトにある印鑑届書(持分会社・記載例)を参考に、法人の代表印を届け出る書類を作成します。様式は、印鑑届書の項の「印鑑(改印)届書」にPDFとExcelのフォームがあるので、どちらかをダウンロードして利用します。
ここで、タスク2で購入した法人の代表者印と、届出人の実印が必要になります。
【6日目のタスク】
タスク8:書類を製本する
ここまでで、書類等がすべてそろったので、提出用の準備をします。
最終確認
すべての書類にじっくり目を通し、誤字脱字がないかを確認します。
原本返還手続き用の書類を作成
普通に原本を提出してしまうと、原本は戻ってきません。会社設立の書類として残しておきたい場合には、「原本還付(添付書面の還付)」の書類を作成します。(原本を手元に残さないでよい場合には、この作業は必要ありません。)
具体的には、法務局による商業・法人登記の申請手続についてのなかの「原本還付(添付書面の還付)」で方法が説明されています。
必要となる書類のコピーを作成し,そのコピーに「原本に相違ありません。」を記載の上,申請書に押印した人がそのコピーに署名(記名)押印(2枚以上になるときは,各用紙のつづり目ごとに契印(割印))したものを申請書に添付して,原本とともに提出してください。別途,原本還付の請求書を作成する必要はありません。
(法務局HPより)
製本
記載例のファイルと同じ順番になるようにで、提出する書類を製本をしていきます。印鑑届出書は製本しません。
- 合同会社登記申請書
- 本店所在地及び資本金決定書
- 就任承諾書
- 払込証明書
- 資本金の計上に関する証明書
- 財産引継書
- 印鑑登録証明書
- 戸籍謄本(⇐婚姻前のをも記録する申出をする場合)
ここまでで、上記の提出する合同会社登記申請書&添付書類一式、原本返還をする添付書類のコピー、CD-R、印鑑届書が揃いました。
【7日目のタスク】
タスク9:法務局へ行って、登記申請する
- 作成した一式(合同会社登記申請書&添付書類一式、原本返還をする添付書類のコピー、CD-R、印鑑届書)と、念のため代表者印と代表者個人の実印を持って、管轄の法務局へ行って登記申請をします。
- 合同会社の登記申請料金は、6万円です。(正確には、資本金の額の1000分の7の額です ただし この額が6万円に満たない場合には6万円になります。法務局の窓口で収入印紙を買って、設立登記申請書の収入印紙貼付台紙へ貼付 します。
- 登記申請をした日が会社の設立日になります。登記申請には、オンラインや郵送の方法もありますが、「会社設立日をこの日にしたい」と希望がある場合には、自分で法務局へ書類を持っていき手続きするのが確実です。
- 書類を提出すると、登記完了の予定日を知らされます。わたしの場合は、登記完了日の予定日はちょうど2週間後でした。登記完了となって履歴事項証明書(登記簿謄本)を取得できますので、そこから、銀行口座の開設や社会保険の手続きなど、各種の事務手続きが可能となります。
ここまでの全プロセスで、ちょうど1週間になります。

短期間で会社設立の作業を終えるポイント
事前準備をしておく
上記のタスク1の「法人名」「法人住所」と、タスク3の「定款記載の事業目的」については、ここで述べた一連の流れとは別に、事前準備をしておくとスムースです。
特に、事業目的については、起業の「ビジネスプラン」を作成する際にじっくり考えて、ほぼ決めておくとよいです。これらが決まって始めて、会社設立へと舵をとることができます。
起業のプランニングについては、公的機関のサイトや専門業者のサービスなど、無料や比較的安価で情報を提供しています。以下の記事でも代表的なものをご紹介しています。
曜日を見ながら作業を進める
印鑑がないと書類が作れないので、印鑑の注文は法人名が決まり次第に真っ先に行います。
タスク3の法務局への確認は平日の決められた時間になりますし、行政書士が電子定款作成に対応してくれるのも基本的に平日です。曜日を見ながら、各タスクを前倒ししたり後ろ倒しして、調整をしながら進めていくようにします。

まとめ:順番を追ってプロセスすれば自力で会社設立も可能!
ご紹介した9つのタスクは決して難しくありません。
事前にしっかり準備をして、きちんと順番を追っていけば、合同会社設立を1週間で手続きすることが可能です。
1週間だと、ちょっとわからないことがあるとギリギリになってしまいますが、2週間あれば余裕をもって進めることができると思います。
これから合同会社を設立しようという方の参考になれば幸いです!
- マネーフォワードクラウド会社設立
:簡単3ステップで知識がなくても会社設立できるマネーフォワードによる無料サービス
- 会社設立freee
:会社設立に必要な書類を質問に回答するだけで全て作成できるfreeeによる無料サービス
- ココナラ【士業(行政書士・税理士etc.)】
法人の登記が完了すると、法人用の電話番号の取得と銀行口座開設へと手続きが進んでいきます。以下の記事を参考にして準備を進めてくださいね。
できるだけ自分で会社設立の手続きをしたい方は、マネーフォワードクラウド会社設立
や会社設立freeeなどのクラウド会計ソフト各社が提供している無料の会社設立サービスが便利&効率的です。
専門知識がなくても、当記事で説明している会社設立書類の多くを自動的に作成することができます。
会社設立サービスの選びかたについては、以下の記事で詳しくご案内していますので、参考にしてくださいね。