スモール起業において、会社設立直後、つまり新設法人の法人口座開設にあたっては、「まずは確実に法人の銀行口座を開きたい」「手数料が安いネット銀行を利用したい」と考える方も多いでしょう。
- ネット銀行(ネットバンク)の法人口座の特徴を確認したい
- ネット銀行の法人口座の手数料比較を知りたい
- 設立したばかりの法人におすすめのネット銀行口座を知りたい
ここでは、上記のような状況の方へ向けて、ネット銀行3行の法人口座の振込手数料を比較したうえで、小さな起業でのおすすめの法人口座とその特徴をご紹介いたします。これから法人口座を開設しようというときの参考になさってください。
当記事は、2022年5月時点の情報を参考にしています。申し込みにあたっては、各銀行のサイトで最新の情報をご確認ください。
ネット銀行3行の法人口座の振込み手数料を比較
個別のネットバンクの特徴を見ていく前に、当記事でご紹介するネット銀行3行法人口座の振込手数料を比較してみましょう。
【ネット銀行3行の法人口座の振込手数料等の比較】(2022年5月現在)*1
GMOあおぞら ネット銀行 |
楽天銀行 | PayPay銀行*2 | |
公式ページ | GMOあおぞらネット銀行 法人口座開設 |
楽天銀行 | ビジネスアカウント |
口座維持・ ネットバンキング利用料 |
無料 | 無料 | 無料 |
他行宛て振込手数料 (3万円未満) |
145円 | 150円 | 160円 |
他行宛て振込手数料 (3万円以上) |
145円 | 229円 | 160円 |
自行宛て振込手数料 (3万円未満) |
0円 | 52円 | 55円 |
自行宛て振込み手数料 (3万円以上) |
0円 | 52円 | 55円 |
*1: 特別な会員や預金残高による優遇ではない「一般的なケース」での比較例です。優遇があれば、金額が異なる場合があります。変更になる場合があるので、ご利用時には必ず最新の情報で確認してください。
*2: 2021年4月5日「ジャパンネット銀行」→「PayPay銀行」へ社名変更されました。また、上記はPayPay銀行本店窓口ではなく、インターネットバンキングでの手数料です。
比較のために、三菱UFJ銀行の場合、法人がBiz STATIONを利用の場合には、他行宛て送金3万円未満で484円、3万円以上で660円となっています。
これと比較すると、上記のネット銀行3行の振込手数料水準は、非常に低い設定になっています。
上記の比較からわかることは、下記の2点です。
- 自行宛ての振込手数料は、GMOあおぞらネット銀行が無料となっており、他2行と比較して安い。
- 他行宛ての振込手数料についても、GMOあおぞらネット銀行が、他2行と比較して優位性がある。
支払い件数が多い場合には、やはり定常的に発生してくる振込手数料をひとつの基準に選びたいですね。
しかし、小さな法人で自社からの支払い件数がそれほど多くないビジネスであれば、(ネット銀行に限れば)手数料の差は大きくありません。
つまり、それぞれのネット銀行の法人口座の特徴を見極めて、自分のビジネスに合うものを選ぶようにしましょう。
次のコーナーでご紹介するネット銀行の法人口座には、次のような共通点があります。
共通する留意点のひとつとしては、ここでご紹介するネット銀行は、いずれも社会保険料の自動引き落としには対応していません。そのため、後述するように、社会保険料の自動引き落としにも対応しているゆうちょ銀行との併せ持ちが、現実的&実務的におすすめです。
もうひとつの留意点としては、法人口座を申し込む前に、どのように法人用の固定電話番号を準備するか?という点があります。
「固定オフィスを持たない」「オフィスの場所は流動的」「仕事中は本業に集中したい」というスモールビジネスの場合、03番号や050番号を取得できる電話代行サービスがおすすめの選択肢です。
多くの電話代行サービスは平日の9時~18時ですが、特に個人を対象としたビジネスでは、平日夜間や土日にも電話代行をお願いしたい状況もありますね。
そんなときには、土日を含めて365日、最大で9時から21時まで対応が可能なBusinessCallなど、対応時間が長い電話代行サービスを検討してみてください。
そのほかにも法人口座の申し込みにあたっては、ホームページの開設など事前に準備しておきたい点があります。以下の記事で関連の情報をご紹介していますので、参考にしてくださいね。
スモール起業時のおすすめのネット銀行口座3選
それでは、それぞれのネット銀行の法人口座の特徴を、特に「会社設立して間もない時期」の口座開設という視点で、詳しく見ていきましょう。
GMOあおぞらネット銀行
GMOあおぞらネット銀行の法人口座は、手数料の安さとテクノロジーを活かしたサービス展開に特徴があり、新設法人が非常に利用しやすい法人口座となっています。
GMOあおぞらネット銀行は、GMOグループの最先端のテクノロジーとあおぞら銀行の歴史ある金融サービスが融合したインターネット専業銀行です。

- 振込手数料が安い&固定費がかからない:振込手数料は最安の水準。
- 使いやすいデビットカード:GMOあおぞらネット銀行 ビジネスデビット
は、毎月利用額の1%がキャッシュバック※。キャッシュカードと一体化でVisaタッチ決済に対応。
- 充実のサービスラインナップ:最大20口座までの口座開設、ビジネスID管理など法人口座に便利なサービス。
- 振込料金とくとく会員あり:振込件数が多い場合に1件当たりの手数料削減が可能。
- 振込入金口座が便利:請求ごとに専用の入金口座を無料で利用可能。
- ビジネスローンやファクタリングに対応:資金調達に関するサービスもオンラインで完結。
※一部キャッシュバック率が異なる利用先があります。
- 口座開設したらすぐにでも高い還元率のデビットカードを利用したい。
- 最安水準の手数料体系で、創業期のコストを節約したい。
- 振込件数が多いので、とくとく会員の利用でコスト削減となる。
- シェアオフィスやバーチャルオフィスを利用している状況での口座申込みである。
- 海外への送金・海外からの送金受け取りは、当面は予定はない。

※口座開設にはGMOあおぞらネット銀行による審査が必要です。
情報連携によりスムースな口座申し込みになりますが、口座開設が約束されているわけではありません。
留意点としては、ペイジーと海外送金には対応していない、という点がありますが、以下のような検討で対応できるでしょう。
- ペイジーを使いたい場合には、下記に説明するように「ゆうちょ銀行との併せ持ち」がおすすめです。
- 海外送金に関しては、1回100万円までの送金であれば、銀行送金よりも透明な手数料体系のWiseなどの専門サービスの利用がおすすめです。詳しくは、ワイズ(旧トランスファーワイズ)の法人向け海外送金を参考にしてください。
GMOあおぞらネット銀行は、GMOグループの銀行として、一歩進んだテクノロジーを利用している点が特長です。ネット銀行として後発組ではありますが、そのぶん手数料や安さや高い還元率のデビットカードの使いやすさなどが魅力。スモール起業にとっては頼りになる法人口座といえるでしょう。
楽天銀行
楽天銀行の法人ビジネス口座 は、楽天市場に出店しようという場合はもちろんですが、一般の起業&開業においても、ネット銀行としては最も知名度がある銀行のひとつです。わかりやすい申込み手続き、ペイジーや海外送金の利用など、日々のビジネス運営に便利なサービスを展開しています。
- ネットでのサービスが幅広い:さまざまなサービスが充実。ウェブでの申し込み手続きがわかりやすいことをはじめ、大量の振り込みや受け取りも使いやすく充実。
- Pay-easy(ペイジー)が利用可能:税金、社会保険料、公共料金などの支払いが可能。
- 海外送金に強い:他のネット銀行と比較して海外送金関係に強い。海外への送金、海外からの送金受け取りのどちらも可能。(尚、1回100万までであれば、上記でご紹介したワイズ(旧トランスファーワイズ)の法人向け海外送金をおすすめしますが、それを超える金額の送金となると、小さなビジネスにとっては、楽天送金の海外送金が便利な選択肢です。)
- 楽天ビジネスデビットカード(JCB)を利用可能:利用額の1%が還元。別途申込みが必要。年会費1,100円。
- キャッシュカードは別途申込みが必要:発行手数料1,100円。
- 同一住所で最大20個まで口座開設が可能:事業ごとや取扱商品ごとに複数の口座で管理したいときに便利。
- 知名度のあるネット銀行を利用したい。
- とりあえず一つの法人口座でいろいろ対応したい。
- 楽天にネットショップの開設を予定している。
- 海外との取引を予定している・海外送金の利用が見込まれる。
- 法人としてデビットカードをメインで使うことを考えていない。
留意点としては、デビットカードやキャッシュカードは有料という点があります。
- デビットカードに年会費がかかります。キャッシュカードと一体化はおらず、デビットカードを利用したい場合には、口座開設後に別途申込みが必要です。
- キャッシュカードに発行手数料がかかります。
これらの点に関しては、法人として「デビットカードは特に使わない(クレジットカードを使う)」「現金の出し入れはしない」という場合には、あまり気にする必要はないでしょう。
ただ、会社設立して間もない時期には、まだ法人のクレジットカードがない段階なのに、細かい出費が重なりがちです。
そのような状況に備えたいと考える場合には、口座開設してすぐにデビットカードを使える上記でご紹介したGMOあおぞらネット銀行の法人口座であれば、キャッシュカードとデビットカードが一体化しているという点で便利かもしれません。
楽天銀行は、ネット銀行のなかでの知名度が魅力です。日常業務に関するサービスはもちろん、ペイジーや海外送金にも強いので、「とりあえずひとつの法人口座でいろいろ対応したい」という場合に便利な法人口座です。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)
PayPay銀行は、ヤフージャパングループの銀行で、2021年4月5日にジャパンネット銀行からPayPay銀行へ社名変更しました。スモール起業に使いやすいさまざまなサービスに加えて、ビジネスローンへの対応やPayPayからの翌日入金対応など、他のネット銀行には見られない特長があります。
- 毎月1回は入金・出金の提携ATM利用料が無料:毎月最初の入金・出金それぞれ1回は取引金額にかかわらず無料。
- Visaデビット付キャッシュカード:キャッシュカードとVisaデビットが一体。Visaタッチ決済対応。残高があれば原則1日最大500万円、法人口座は20口座まで開設できるので、1日最大1億円まで利用可能。
- カードレスVisaデビットにも対応:カードなしでの番号だけのデビット。ネット決済専用。カード番号の発行・変更がWebで即時に可能なので、セキュリティ的に安心。
- Pay-easy(ペイジー)が利用可能:税金、社会保険料、公共料金などの支払いが可能。
- 海外送金は提携サービスあり:海外への送金については、「PayForex」を提供するQueen Bee Capitalを通じてオンライン完結で可能。
- ビジネスローンに対応:ネットで審査・申込みできるビジネスローンに対応。
- さまざまな決済サービスに対応:PayPay売上が毎日締日、締日の翌日には入金など、決済サービスが充実しています。
- 毎月一度は提携ATMからの入金・出金をする(現金を利用する方)。
- 仕入れなどの多額の決済において、クレジットカードの与信枠を気にせずに、デビットカードで決済したい。
- カードレスVisaデビットで、安心してネット決済(ネットショッピング)を利用したい。
- ヤフーにネットショップの開設を予定している。
- ビジネスローンの利用を検討したい。
留意点としては、法人口座の場合はデビットカード利用に対してのポイント還元やキャッシュバック還元に対応していないという点です。そのため、デビットカード利用で利用額に応じた還元を期待したい場合には、向いていません。
PayPay銀行は、ヤフージャパングループの銀行として、今後さまざまなサービスの拡充が予想されます。他にない便利で特徴的なサービスも多いので、状況が合えばとてもおすすめの法人口座です。
番外編1:ゆうちょ銀行(ネット銀行との併せ持ちがおすすめ)
法人の場合、いろいろな状況を考えて、最低2つの銀行口座を開設しておくのが安心です。
また、ビジネスの種類によっては、ネット銀行だけでなく、実店舗のある銀行口座をもっていたいという状況が考えられます。
このような状況において、「法人口座の維持に手数料はかけたくない」「普通銀行に法人口座を開設するのは敷居が高い」と考える場合は、ゆうちょ銀行の法人口座がおすすめの選択肢と考えられます。
- 全国に店舗:日本全国、どこの場所でのスモール起業でも利用しやすい。
- 知名度がある:圧倒的に知名度があるので、ローカルな信用金庫などよりも使いやすい場合が多い。
- 社会保険料の自動引き落としに対応している:毎月のルーティンの支払いにはゆうちょ銀行を使って自動引き落としを設定しておくと便利。
- Pay-easy(ペイジー)が利用可能:税金等の支払いに便利。
- 手数料が高め:ネット銀行などと比較して、振込手数料などの手数料全般が高めの設定。
上記のとおり、手数料が高いために、支払いの日常使いにはあまり向きません。そのため、スモール起業におすすめなのは、「ネット銀行+ゆうちょ銀行」という組み合わせで2つの法人口座を開設しておく方法です。
つまり
- 対外的に入金口座などで実店舗のある銀行が必要な場合にはゆうちょ銀行
- 日常的な支払い業務など手数料が発生する業務に関してはネット銀行
というように使い分けて利用するわけです。
番外編2:どうしても普通の銀行に法人口座がほしい場合
新設法人でありながら、どうしても都市銀行や地方銀行のような普通銀行に法人口座を開きたい場合には、法人口座開設に関しての「紹介」を利用しましょう。
知り合いを通じての紹介であれば心強いですが、最近ではシェアオフィス・バーチャルオフィスなどでも法人口座開設のサポートをしてくれるところが増えてきているようです。
たとえば、下記の記事でご紹介している【レゾナンス】は、法人会員にみずほ銀行を紹介するというサービスを提供しています。
紹介を利用するとしても、口座開設に関する銀行の審査があることに変わりはありませんから、事前の準備をしっかりとして手続きへと進みましょう。準備項目の例としては、下記の記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてくださいね。
まとめ:新設法人はまずネット銀行の法人口座を開設しよう
共通するサービスが多いために似たように見えるネット銀行の法人口座ですが、詳しく見ていくと、それぞれの法人口座ならではの強味と特長があります。
それらを理解して、自分が始めようとしているスモール起業の状況に合う法人口座を選ぶようにしてくださいね。
当記事が、これから法人の銀行口座を開設しようという方の参考になれば幸いです!
- GMOあおぞらネット銀行 法人口座開設
:手数料最安水準。最先端テクノロジーの利用やVisaデビットのキャッシュバックが魅力。
- 楽天銀行の法人ビジネス口座 :ネット銀行として知名度が高い。ひとつの法人口座で対応したいときにおすすめ。
PayPay銀行 ビジネスアカウント:毎月初回は入金・出金のATM手数料が無料。Visaデビットの利用枠が高い。
法人口座を無事に開設できたら、次はいよいよ法人のビジネス用クレジットカードの申込みへ進むことができます。(日常的な支払いであればデビットカードで十分ですが、デビットカードにも「後払い電子マネーは使えない」「ホテルやレンタカーの予約支払いなどに使えない場合がある」など留意すべき点があります。そのため、無事に法人の銀行口座を開設できたあとには、法人用のクレジットカードを作っておくようにしましょう。
以下の記事もご参考にしてくださいね。
ここでは、主として以下の視点でご紹介する口座を選びました。
*必ず可能というわけではありませんが、シェアオフィス・バーチャルオフィスだと即お断りということはありません。