個人事業主やフリーランスとして独立開業したら、ビジネス専用の銀行口座を設けましょう。生活費など個人のお金とビジネスのお金をしっかり分けることで、その後の事務作業軽減につながります。
スモール起業であれば、屋号入りの口座を持てるネット銀行(ネットバンク)の「個人事業主口座」「営業性個人口座」が便利です。
- ネット銀行の個人事業主向け口座の特徴を確認したい
- ネット銀行の個人口座の手数料比較を知りたい
- 個人事業主向けにおすすめの「ビジネス口座」「営業性個人口座」を知りたい
ここでは、上記のような状況の方へ向けて、ネット銀行3行の個人事業主向け口座の振込手数料を比較したうえで、屋号付きで開設できる銀行口座をご紹介いたします。これから個人事業主向けの口座を開設しようというときの参考になさってください。
尚、法人向けおすすめ口座(小さな起業向け)については、こちらの記事をご参照ください。
当記事は、2022年5月時点の情報を参考にしています。申し込みにあたっては、各銀行のサイトで最新の情報をご確認ください。
ネット銀行の「個人事業主口座」「営業性個人口座」をつくろう
個人事業主がビジネスに関するお金の出し入れで銀行口座を使うとき、個人の生活費の銀行口座と分けて「ビジネス用の口座」をもつことで、圧倒的に事務効率が高くなります。
実務的な面でも、経理処理や税務申告を外部の専門家に任せるときに、ビジネス専用の口座であれば、その情報だけを渡すことができます。ビジネス初期の段階で分けておけば、個人の生活費の出入りが混在していることもなく、余計な心配がありません。
さらに、ビジネス用口座ならではの屋号入りの口座としておけば、入金口座として顧客にも安心感を与えることができます。
ビジネス用に口座を新たに考える場合、スモール起業の個人事業主であれば、ネット銀行の「個人事業主口座」「営業性個人口座」「個人ビジネス口座」がおすすめです。
これらは、個人事業主を対象としたビジネス用の口座で、一般の個人用の口座と異なって、個人事業主がビジネスをおこなっていくうえで使える口座として設けられています。

- ネットで手続きが完結:すべてネットで手続きできるので、時間節約になります。
- 手数料が安い:普通銀行と比べて各種の手数料が安いので、経費節約になります。
- 生活費と分けて管理:ビジネス用の口座を、個人の生活費と別口座として管理しておけば、経理処理や税務申告にも対応しやすいです。
- 屋号入りの口座:銀行によっては屋号入りの口座名で口座を開設できます。
- ビジネス用クレジットカードの引き落とし口座:個人事業主向けのビジネス用のクレジットカードの引き落とし口座として設定できます。
- 決済サービスが充実:ビジネス用口座ならではのサービスを利用できます。
- セキュリティ対策:ネット銀行ならではの各種のセキュリティ対策が施されています。
ひと言でまとめれば、ネット銀行の個人事業主口座を使うことで、「時間と経費の両方を節約」できると同時に「銀行のビジネス向けサービス」をきるわけです。
普通の個人口座と、個人事業主向けの「個人事業主口座」には、以下のような違いがあります。
- 正式に開業しているか?:個人事業主口座の開設には、個人事業開業届出書など個人事業として開業している書類の提出が必要となります。
- 屋号入りの口座:個人事業主口座では、屋号入りの口座名を持つことができます。(これは銀行により対応が異なります。)
- ビジネス用クレジットカードの引き落とし:個人事業主口座は、ビジネス用のクレジットカードの引き落とし口座として指定できます。
- ビジネス上の利便性:個人事業主口座は法人口座とサービス内容が似ており、決済サービスの充実やデビット還元率の優遇など、普通の個人口座よりもビジネス上の利便性が高いことが多くなっています。
- 振込みをしてもらう場合、多くの場合で正式口座名を使うことになるので、氏名を隠すことはできません。
- 下記でご紹介するPayPay銀行など屋号のみで振込手続きを受け付ける銀行もありますが、ATM振込みの最終確認では、屋号と実名が入った正式口座名が表示されるので、氏名を隠すのは難しいようです。
ネット銀行3行の個人事業主口座の振込み手数料を比較
【個人事業主口座から他行宛て振込手数料の比較】(2022年5月現在) *1
3万円未満 | 3万円以上 | |
GMOあおぞらネット銀行の個人事業主口座 | 145円 | 145円 |
160円 | 160円 | |
楽天銀行の個人ビジネス口座 | 150円 | 229円 |
*1: 特別な会員や預金残高による優遇ではない「一般的なケース」での比較例です。優遇があれば、金額が異なる場合があります。変更になる場合があるので、ご利用時には必ず最新の情報で確認してください。
*2: 2021年4月5日「ジャパンネット銀行」→「PayPay銀行」へ社名変更されました。また、上記はPayPay銀行本店窓口ではなく、インターネットバンキングでの手数料です。
比較のために、三菱UFJ銀行の場合、個人事業主がBiz STATION Lightを利用の場合には、他行宛て送金3万円未満で484円、3万円以上で660円となっています。
これと比較すると、上記のネット銀行3行の振込手数料水準は、非常に低い設定になっています。
上記のネット銀行3行間の振込手数料比較では、GMOあおぞらネット銀行が最安水準となっています。とはいえ、ネット銀行3行の振込手数料に大きな差はありませんから、手数料水準も含めて自分の状況に合うネット銀行の口座を選ぶ視点が大切になります。
ネット銀行の個人事業主向けおすすめ口座
このコーナーでは、個人事業主が使いやすいネット銀行の個人事業主向け口座をご紹介します。
ここでご紹介する3行の個人事業主向け口座の共通点としては、口座名に屋号を入れることができる点です。口座名に屋号があることで、振込人に安心して振り込んでもらうことができます。
GMOあおぞらネット銀行:コスパの高い銀行口座
GMOあおぞらネット銀行の個人事業主口座は、業界最低水準の手数料体系と高いコストパフォーマンスが特徴となっています。
GMOインターネットグループとあおぞら銀行が母体のネット専業銀行として、最先端のテクノロジーでの金融サービスを提供しています。

- 最安水準の手数料:上記の振込手数料比較からもわかるとおり、GMOあおぞらネット銀行の手数料体系は業界最安レベルです。自行宛ての手数料は無料です。
- 便利なVisaデビットカード:キャッシュカードと一体化したVisaデビットカードが発行されます。年会費無料。還元率1%※。Visaタッチ決済も使えます。
- 屋号入りの口座:希望すれば屋号入りの口座「屋号+個人名」または「個人名+屋号」を開設できます。
- 資金を便利に管理:顧客ごとの「振込入金口座」や目的別の「つかいわけ口座」で資金を楽に管理できます。
※一部キャッシュバック率が異なる利用先があります。
留意点としては、個人事業主口座では、海外送金や海外からの送金受け取りには対応していないという点があります。
おすすめポイントとしては、開業まもない個人事業主として最も求めたい基本的な項目、つまり「最安水準の手数料」「還元率の高いVisaデビットカード」「屋号での口座開設」を満たしているという点です。コスト管理を重視する個人事業主におすすめのビジネス口座といえるでしょう。
PayPay銀行:スモール起業に便利な決済サービス
PayPay銀行 ビジネスアカウント(営業性個人口座)は、スモールビジネスに便利な決済サービスに特徴があります。
- 充実した決済サービス:支払い・受取りの両方でさまざまな決済サービスの利用が可能です。屋号のみでも振込みを受け付けることができます。
- ペイジー(Pay-easy)の利用が可能:税金や社会保険などの支払いをネットでできます。
- AMT手数料が毎月1回入出金無料:提携のATMの毎月最初の入金・出金手数料が無料となります。毎月の定期的なお金の出し入れに便利です。
- Visaデビットの利用限度額が高い:残高があれば1日500万円までの限度額。多額の仕入れ決済などに便利です。クレジットカードの与信枠を気にしないで済みます。
- カードレスVisaデビット:Visaデビットでは、ネットショッピング専用の番号だけのVisaデビットを4つまで発行できます。ネットショッピング等に安心です。
留意点としては、個人事業主口座では、デビットカード利用額に応じての「ポイントやキャッシュバック還元はない」という点です。しかし、個人事業主としては、(デビットカードはあまり使わないで)ポイント還元があるクレジットカードを日常的に利用するのであれば、特に気にする必要はないでしょう。
尚、個人事業主向けのポイント還元が高いクレジットカードについては、以下の記事でご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
おすすめポイントとしては、屋号のみでも振込みしてもらえる点です。(ただし、ATM振込みの画面上では、個人名を含んだ正式口座名が表示されますので、実名を明かしたくないという目的にはちょっと弱いかもしれません。)個人事業主向けのビジネスローンもあり、仕入れのために先にキャッシュが必要となるビジネスモデルでの起業にも利用価値が高いでしょう。
楽天銀行:ネットショップの運営におすすめ
楽天銀行の個人ビジネス口座は、ネットショップなど個人事業として「B to C」のビジネス(一般消費者向けのビジネス)を展開しようという方には利用しやすい選択肢です。
- ネットショップ運営に便利:楽天市場への出店をはじめ、ネットショップの運営に便利なさまざまな決済サービスが充実しています。
- 屋号入りの口座:屋号入りの銀行口座を開設できます。
- 楽天銀行かんたん決済:楽天銀行間での決済時には、口座や支店番号の入力を省略した振込が可能となっています。
- 海外送金・海外からの受取り:メガバンクと比較して安い手数料で海外送金をすることができます。
- 業界最高水準のデビット還元率:JCBビジネスデビットカードは100円につき1円のキャッシュバック。1%相当の還元率です。
留意点としては、個人事業主用の口座の場合にはデビットカードは、別途申込みが必要&年会費が発生するという点です。これは、上記でご紹介したGMOあおぞらネット銀行・PayPay銀行と異なります。
おすすめポイントとしては、ジャパンネット銀行と並んで決済サービスが充実している点です。さらに、海外送金・海外からの送金受取りに利用できるので、海外取引のための口座が必要な場合にも貴重な選択肢となります。
まとめ:開業届を出したら「個人事業主口座」を申込みしよう
共通するサービスが多いために似たように見えるネット銀行の個人事業主向け口座ですが、詳しく見ていくと、それぞれの法人口座ならではの強味と特長があります。
それらを理解して、自分の個人事業の業種や状況に合うネット銀行を選ぶようにしてくださいね。
当記事が、個人事業主でビジネス用の銀行口座を開設したいと考えている方の参考になれば幸いです!
- GMOあおぞらネット銀行の個人事業主口座:手数料最安水準。コスパの高さが魅力。
PayPay銀行 ビジネスアカウント:充実した決済サービス。毎月初回はATM入出金の手数料無料。
- 楽天銀行の個人ビジネス口座:「B to C]ビジネスやネットショップの運営におすすめ。
個人事業の開業にあたっては、いろいろな準備が必要になります。
ビジネスで使う住所や電話番号について、セキュリティ上の理由から「自宅住所や個人電話番号とは別のものを使いたい」という場合もあります。そのような場合には、下記の記事も参考にしてくださいね。